女店員「レジ袋有料になりますが、よろしいですか?」
男「ああ、7月から有料なんだっけ……いくら?」
女店員「10億円」
男「は?」
女店員「10億円です」
男「いや、ちょっと待て、おかしいだろ」
女店員「おかしくありません」
男「たかが使い捨ての袋に10億て!」
女店員「10億円払わなければ、レジ袋はつけません」
男「なんだと……」
元スレ
男「7月からレジ袋有料なんだっけ……いくら?」女店員「10億円」
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男「んなもん払えるわけねーだろ! ぼったくりにも程がある!」
女店員「なぜ払えないのですか」
男「そんな金持ってねーし……」
女店員「なぜ持ってないのですか」
男「だって俺、しがないバイト暮らしよ? しかも不真面目。10億なんて一生かかったって無理だ!」
女店員「つまり、あなたはその程度の男であると」
男「な……!」
男「もういい! 袋なんかいらない! 手で持って帰る!」
……
客「これください」
女店員「袋は有料になりますが、おつけいたしますか?」
客「お願いします」
男「!」
男(また10億だとかいって、相手を怒らすぞ……)
女店員「袋は3円になります」
客「分かりました」
男「!?」
男「ちょっと待てぇぇぇぇぇ!!!」
女店員「なんでしょう」
男「なんでこの人は3円なんだよ!」
女店員「いけませんか」
男「いけませんよ!」
男「だったら俺にも3円で袋ちょうだいよ!」
女店員「ダメです。10億円です」
男「なにこの露骨な差別!」
男「分かった! もういい!」
男「俺は意地でも10億円稼いでやる!」
男「稼いで、10億の現ナマ持ってきて、札束でてめえの頬をひっぱたいてやる!」
女店員「やれるものならどうぞ」
男「吐いた唾飲み込むなよぉぉぉぉぉ!」
男「うおおおおおおおおおおおっ!!!」ドドドドド…
女店員「……」
男「あのさー」
友人「ん?」
男「10億稼ぐにはどうしたらいいかな?」
友人「!?」ブッ
友人「いきなりなんだよ!?」
男「わけあって、10億円稼がなきゃいけなくなったんだよ」
友人「一つだけはっきりしてることは……」
男「?」
友人「もし俺が方法を知ってたら、今頃俺が大金持ちになってるわな」
男「たしかに」
友人「お前いくら持ってんだよ?」
男「10万だ」
友人「10万ねえ……」
友人「たとえば、万馬券を二回当てれば、10万が1000万に、1000万が10億、で到達だわな」
男「それだ!」
友人「えっ」
男「競馬場へ行くぞぉぉぉぉぉ!!!」
男「超大穴“イツモドベビリ”に全財産賭けるぜ!」
男「いけえええええええ!!!」
パカラッ パカラッ パカラッ …
男「……」
男「俺の……10万が……」
男「……」
友人「お、おい元気出せよ……」
友人「今日はほら……おごってやるからさ」
男「いや、落ち込んでるわけじゃないぜ。覚悟が決まったんだ」
友人「え」
男「10万スッても0になるだけ。そんな生半可な覚悟で、大金を稼ごうってのが間違いだったんだ」
友人「なにいってんの?」
男「俺は……命を賭ける!」
男「ってわけだ。闇金さん、俺の内臓全部担保にするぜ!」
黒服「気に入った!」
黒服「あんたの熱意に負けて、1000万貸してやろう!」
男「ありがとう!」
男(なんだろう、しくじったら死ぬってのに……)
男(テンション上がってきた!)
男(これだ! 俺はこのスリルを求めていたんだ!)
男(さて、真面目に金を稼ぐ方法を考えるか)
男(ギャンブルは論外だな。俺には才能ないって分かった)
男(株やFXも、ろくに知識もない俺じゃどうしようもないだろう)
男(今ならユーチューバーってのもアリかもしれないが、内臓を担保にしてる奴の動画を見る奴がいるとは思えない)
男(となると……起業か!)
男(現代のニーズを読み切り、新しいビジネスで大儲け! これしかない!)
男「おーい」
友人「おう」
男「今度起業しようと思うんだけど、このアイディアどうかなって思って」
友人「どれどれ……」
友人「……」
友人「悪くないな……。時代の流れに乗ってるし……」
友人「いや、悪くないどころか……かなりいいぞ! これ!」
男「ホントか!」
友人「あのさ!」
男「ん?」
友人「俺も今、普通に働いてるけど、どうにも退屈で仕方ないんだ」
友人「だから、俺もお前と夢見させてくれないか!」
男「もちろんいいぜ!」
ガシィッ!
友人「おーい、融資受けれることになったぞ!」
男「本当か!」
~
ワイワイ…
男「応募したらこんなに集まってくれるとは……」
友人「それだけお前のプランが現実味があるってこった」
~
男「製品の量産体制が整った!」
友人「よーし、バリバリ売りまくろうぜ!」
男「闇金さん、1000万円です」
黒服「……」
男「まだここから、利子を片付けなきゃいけませんが……」
黒服「いや、利子はいいよ」
男「えっ……」
黒服「その代わり、あんたの会社に俺を入れてくれねえか」
黒服「こう見えて、経理の腕は抜群だぜ」ニヤッ
男「ありがとう!」
ビジネスは当たり、会社は急速に成長していくが――
男「いいか、みんな!」
男「業績は伸びているが、決して油断してはならない! 初心を忘れてはならない!」
男「堅実な経営で、着実に成長していこう!」
オーッ!!!
友人「とても競馬で全財産スッたことある奴の台詞とは思えん……」
黒服「それどころか内臓担保にしたこともあるしな」
ある日――
男「よいしょ、よいしょ」ガラガラ…
秘書「あら、社長。大量のトランクを運んでどちらへ?」
男「大切な用があるんだ」
男「悪いが、午後からの予定は全てキャンセルしてくれ」
秘書「かしこまりました」
女店員「いらっしゃいませ」
男「やぁ、お久しぶり」
女店員「ずいぶんと顔つきが変わりましたね」
男「おかげさまでね。さて……レジ袋をくれないか」
女店員「10億円です」
男「ちゃんと……用意してあるよ」
ドン!
女店員「驚きはしません」
女店員「あなたなら……できると思ってましたから」
男「やはりな……」
男「君は私がくすぶらせてた、スリルを求める心や追い詰められてこそ光る商才を見抜いていた」
男「だから、あんな無茶をいったんだね」
女店員「その通りです」
男「私はまんまと君の挑発に乗り、こうして成功してしまったわけか」
女店員「あの時は無礼を申しました」
男「かまわないさ」
女店員「それではレジ袋をお持ち下さい。それと10億円は結構です。レジに入りませんし」
男「いや……今や私もレジ袋は不要だ。それよりももっと欲しいものがある」
女店員「なんでしょう」
男「君が欲しい」
女店員「!」
男「君は私の本質を見抜き、ここまで導いてくれた」
男「私がビジネスで成功できたのも、君とのやり取りがあったからだ」
男「私はかつて、買い物に使う袋など、使い捨てに過ぎないと考えていた」
男「いや、きっと……世の中のさまざまなものに対してそう思って生きてきたんだろう」
男「だから、私は自分自身すら使い捨て、何かに本気になるということができなかった」
男「だが、今は違う!」
男「一生大切にしたい仲間や……部下が出来た!」
男「そのことに気づかせてくれた君が欲しい!」
男「今の私なら……君を一生大切にできる!」
女店員「……!」
男「結婚しよう」
女店員「喜んで」
ワァァァァァ… パチパチパチパチパチ… ヒューヒューピーピー…
翌日のスポーツ新聞は、次の記事が一面を飾った。
『超画期的エコバッグを生み出した若社長、超電撃結婚!!!』
おわり